3.3 大事にしている手法

私たちは、様々な既存の手法を大切にしています。なぜなら、これらの手法には豊富な経験と洞察が詰まっており、過去に成功した実績があるからです。これらの手法は、世界中で数多くの組織や個人によって採用され、その効果が実証されています。

また、既存の手法には、それぞれの文化やコミュニティにおいて受け入れられる独自の特性や哲学があります。これらの手法を尊重し活用することで、異なる背景や価値観を持つ人々とのつながりを深め、より包括的で持続可能なアプローチを確立することができます。

さらに、既存の手法は過去の知見を踏まえつつ、現在の課題に対処するためのヒントや指針を提供してくれます。これらの手法を取り入れることで、私たちは効果的な行動計画を立て、より効率的に目標を達成することができます。

したがって、リコネクトでは既存の手法を大切にし、それらを具体的な課題に適用するための革新的な方法を常に模索しています。この取り組みによって、私たちは過去の知恵と未来の展望を結びつけ、より持続可能な社会や組織の構築に貢献することを目指しています。

ここからは、私たちが大事にしている手法の一部をご紹介します。

■ピーター・センゲ「学習する組織」

学習する組織は、1990年にピーター・センゲが提唱した組織マネジメントのアプローチです。このアプローチは、数ある組織開発の手法の中でも、企業や国際機関の経営者に大きな注目を集めたエポックメイキングな書籍です。

ピーター・センゲは、組織や個人が視野を広げ、視座を転換するために必要な能力を、5つのディシプリンとして定義しました。

(1)自己マスタリー

(2)共有ビジョン

(3)メンタル・モデル

(4)チーム学習

(5)システム思考

リコネクトでは、特に、具体的な事例やツールが記載された2冊のフィールドブックを重視しています。

「学習する組織: 10の変革課題」

「学習する組織: 5つの能力」

学習する組織のアプローチは、機械論から生命システム論へ、要素還元からホールシステムへと見方を転換することで、自らの行動、思考、意識に潜む無駄に気づき、より効果的な行動、思考、意識を共に創り出すことで、組織の変革を進めます。

■エドガー・シャイン「プロセスコンサルテーション」

1989年、MIT内に組織学習センター(The Organizational Learning Center)が設立され、ピーター・センゲがディレクター、エドガー・シャインがキーアドバイザーを務めました。

組織心理学とその応用である組織開発の専門家であるエドガー・シャインは、「あなたの組織はここが間違っている」「従って、これからはこうしなさい」という診断型のコンサルテーションスタイルでは、クライアントが自ら考える力を失ってしまうとして、それに対抗する考え方として「プロセス・コンサルテーション」という手法を提案しました。

診断型のコンサルテーションは、可能な限り主観を排除し、客観的なアプローチを重視する考え方で、その根底においてニュートン物理学の原理に基づいています。一方で、エドガー・シャインのプロセス・コンサルテーションは、観測者の介入そのものが現象に影響を与えるという現代物理学の知見を取り入れています。

彼の支援学の根底にある哲学は、「人にできるのは、人間システムが自らを助けようとするのを支援することだけ」です。(注:「人間システム」は、個人、集団、組織、地域社会を含む概念です)

「プロセス」は、組織やチーム内で個々のメンバーの間に起こる目に見えない動きや影響関係、関わり方、相互作用、行動のことを指します。

組織開発コンサルタントは、これらのプロセスに組織メンバーが自ら目を向け、気づき、変化させることを支援する役割を果たします。

私たちはエドガー・シャインが提唱する「謙虚なコンサルタント」の姿勢を大切にしています。

■野中郁次郎「SECIモデル」

ピーター・センゲの「学習する組織」、エドガー・シャインの「プロセスコンサルテーション」といったアプローチは、ナレッジマネジメントのフレームワークであるSECIモデルと密接に関連しています。

このモデルは、野中郁次郎氏と竹内弘高氏によって提唱され、知識創造の過程を体系化したものです。

SECIモデルでは、知識創造は個人や組織が持つ暗黙知を共有の知識(形式知)に変換する4つの段階を経て行われます。まず、「共同化」という段階では、経験や知識を個人間で共有し合うことで暗黙知が形成されます。次に、「表出化」では、暗黙知を言葉や文書などの形式に表現し、共有可能な知識に変換します。その後、「連結化」の段階では、異なる知識を組み合わせ、新たな洞察や理解を生み出します。最後に、「内面化」では、外部から得た知識を自己の知識やスキルとして取り込むプロセスが行われます。

ただし、SECIモデルにはいくつかの課題もあります。例えば、表出化への抵抗や、プロセスの均一的な内面化が困難であることが挙げられます。また、活動のゴールが明確でない場合や、組織全体での運用が難しい場合もあります。特に、「共同化」や「表出化」といったプロセスにおけるメンバー間の信頼関係や対話の重要性は、言うまでもありません。組織がSECIモデルを活用するためには、これらのプロセスを促進し、支援する環境を整えることが重要です。

リコネクトでは、これらの問題に対処するために、様々な手法やアプローチを駆使しています。組織が自らの潜在能力を最大限に引き出し、持続的な成長を実現するためのサポートを提供することで、SECIモデルを通じた知識創造のプロセスに伴走します。

■ロバート・キーガン「組織の自己変革理論」

ハーバード大学の教授であるロバート・キーガンによる成人発達の理論的研究に加え、彼の長年にわたる実践的手法が紹介された書籍が、「変革を拒む組織の自己改革理論」を解説して世界的ベストセラーになりました。

私たちは時折、「なぜうちの組織は変われないのか?」と考えることがあります。筆者は、組織が変革できない理由は「人には変革を拒む免疫機能が備わっているからだ」と述べています。この免疫機能には、技術的な課題に対する免疫と精神的な課題に対する免疫の2種類があります。

技術的な課題に対する免疫とは、「優秀なマネジャーになりたいけれど、マネジメント技術が不足している」といった望む変化に対して技術的なスキルが不足していると判断し、変化を拒むことです。一方、精神的な課題に対する免疫とは、「優秀なマネジャーになりたいけれど、自分がそうなれるか不安だ」といった、望む変化に対して心理的なハードルが高く、変化を拒むことです。

キーガンは、人々は自らの変化を望んでも、なんらかの理由をつけて行動を妨げる免疫機能を持っていると語っています。人や組織が変われない理由は、しばしば「裏の目標」や「強力な固定観念」といった、本音や個人の認識に潜む障害によって生じると著者たちは指摘しています。

組織の変化を成功させるためには、まずは数年にわたる取り組みを覚悟することが必要です。このような著者たちの知見を元にした多くの事例を含む書籍を、これまでの成功と失敗から学び、変革の道を切り開くための貴重な情報源として、リコネクトは重要視しています。

■エイミー・エドモンドソン「チーミング」

米国ハーバード大学の教授であり、チーム論の専門家でもあるリチャード・ハックマンは、「デキるチーム」の5つの条件を以下のようにまとめました。

①真のチーム(Real team)であること

②説得力のある方向性(Compelling direction)を有していること

③実行可能な構造(Enabling structure)を有していること

④支援の環境(Supportive context)があること

⑤専門家によるコーチング(Expert coaching)が提供されていること

ゼロックス社を含む大規模な調査では、これらの条件の有効性が示された一方で、これらを整えるのは難しいという批判もありました。

新たなアプローチとして、チームを静的な状態をあらわす名詞としてではなく、常に動き続ける状態として捉える「チーミング」の考え方が浮かび上がりました。これはまさしく、生命の動的平衡の考え方を、チームに適用したものと言えます。ハーバード・ビジネススクールの教授であるエイミー・エドモンドソンは、この新しいアプローチを提唱し、組織学習とリーダーシップの専門家として活躍しています。

今や、「チーム」は、これまでのスポーツチームや音楽家のグループのように、物理的に1ヶ所に集う固定的なメンバーの集団ではなく、世界中に分散し、目的を達成したら解散する流動的な集団になりました。さらには様々な競争環境の急速な変化に対応するために、固定的な役割や集まりではなく、柔軟で協力的な「チーミング」が必要とされています。

チーミングは、失敗から学び、成功につなげるための新しい概念であり、組織学習を進めるために不可欠な要素です。このようなアプローチによって、「学習力」と「実行力」を高めることが可能です。

■アダム・カヘン「変容型ファシリテーション」

この本の帯に書かれた言葉、「まとめようとして予定調和に陥る。個々を尊重し過ぎて何も決まらない」というメッセージは、私たちが日常的に見かける光景を的確に表現しています。

アダム・カヘンは、ロイヤル・ダッチ・シェル社でシナリオチームの代表を務め、南アフリカの民族和解を推進するプロジェクトにも参加し、シュワブ財団の「ソーシャル・イノベーション思想的指導者2022」にも選出されました。彼の著書には『敵とのコラボレーション』や『未来を変えるためにほんとうに必要なこと』などがあります。

『変容型ファシリテーション』では、トップダウンとボトムアップの変革が単独ではうまくいかない理由や、その代わりとなる「変容型ファシリテーション」の理論や手法について詳しく説明されています。また、ファシリテーターの役割は、メンバーが協働する際の障害を取り除くことであると繰り返し語られます。

例え、重要なステークホルダー同士が対立する立場にあっても、話し合いを進める方法や、意見の保留の仕方、グループとしての気づきに至るステップなど、話し合いの基本を示すバイブル的な一冊として、私たちはこの本を捉えています。

■ORSC システムコーチング

「システム・コーチング(ORSC®)」は、組織やチームの関係性を向上させ、成果に結びつけるコーチング手法です。一般的なパーソナルコーチングが「個人」を対象とするのに対し、システム・コーチングは「システム全体(チーム、グループなど)の関係性」を重視します。

システムコーチング®は、システム理論、組織開発理論、ユング心理学、パーソナルコーチングなどを理論的背景として、マリタ・フリジョンとフェイス・フラーによって開発されました。

人々は、家族システムや社会システム、経済システムなど、さまざまな関係性に属しています。システムコーチング®では、個々の行動や考え方だけでなく、システム全体との相互作用に焦点を当て、組織の「人的側面」を強化します。これにより、コミュニケーションの改善や信頼関係の構築、効果的な意思決定を促進します。

また、システムコーチング®の強みは、集団のあり方と個人のあり方を統合した点にあります。関係性システムの実体化や「RSI®(Relationship Systems Intelligence️)」などのコンセプトを導入し、本質的な対話の場を提供します。

システムコーチング®は、集団の課題を解決することを志向する手法ですが、個人にフォーカスするコーアクティブ・コーチング®とも親和性が高く、個人と集団の両方に関わることができるのが特長です。