2.6 総合格闘技としての組織開発
社員個人のスキルや知識の習得、モチベーションを上げるための人財開発という言葉は聞いたことがあっても、組織全体の機能や仕組み、人間関係、文化などの改善を目的としておこなわれる組織開発(OD = Organization Development)は、まだまだ一般的ではないかもしれません。
それでも、昨今、組織開発部を人事部の中や人事部とは独立する形でおく会社は徐々に増えています。
個人の力を高めるのが「人材開発」、組織の力を高めるのが「組織開発」であると、ざっくり理解することも可能です。
ますます多くの組織で組織開発が必要とされる理由は、下記のクネビン・モデルにおいて、事前に因果関係がわからない「複雑な状況」や因果関係が存在しない「混沌とした状況」に入るようになったことによります。このような状況では、従来のアプローチでは問題解決が難しくなります。

この状況の中ではますますキーガン教授のいう「環境順応型知性」では対処能力に限界があり、「自己主導型知性」や「自己変容型知性」が個人としても組織としても必要になってきます。
そこで進化してきたのが、組織開発のアプローチです。
"The Change Handbook"では、組織開発で使用される60以上の手法を包括的に紹介しており、これらの手法には共通する7つの特徴、あるいは信念があると言います。
以下がその7つです。
①意義ある目的の存在
“We are doing something that matters.” 「私たちは、なにか重要なことをしています。」
②個人の貢献力の解放
“I see what I can do.” 「私には、私にできることが分かっています。」
③全人的なアプローチ
“I can be myself; who I am matters.” 「私は、私らしくいられます。私という人間は大切にされています。」
④組織内の知識と知恵の活用
“Among us, we have the knowledge and skills we need or know how to get it.”
「私たちの中に、必要な知識やスキルがあり、それを活用する方法が分かっています。」
⑤重要な情報の共同作成
“We shape the story together.”「私たちは一緒に道筋を描きます。」
⑥全体システムへの視点
“I understand how we fit together.” 「私は、私たちがどのように補い合うかを理解しています。」
⑦変化を過程として捉えること
“How we fit together evolves over time.”「私たちのあり方は、時間とともに変化します。」

組織開発の手法に共通するこれら7つの特徴は、個人と組織を結びつけ、更には、個人と組織の両方の存在そのもの(Being)と、行動(Doing)の統合を図るための対話を通じて、つながりを築きます。
組織開発は、物理学、生物学、心理学、社会学が連動して起こしつつある大きなパラダイムシフトを、私たちが日々、様々な形で囲まれて暮らしている組織分野に応用したものと言えます。
ここまでの内容を改めて整理すると、すべてはホロンであるという視点から出発し、最初のホロンである物理学では絶対的客観の存在が否定され、それに基づいて次のホロンである生物学では生き物が存在ではなく現象であると考えられていることをご紹介しました。さらに、上位のホロンである心理学の観点では、成長は子どもだけでなく大人にも可能であることが理解されてきています。その上のホロンである社会学ではコミュニケーションが現実を形成するという理念が提示され、これらの視点が総合格闘技としての組織開発の理論や手法に反映されています。
私たちが無意識に慣れ親しんできた思い込みを大きく更新しつつあるこれらの領域でのパラダイムシフトを踏まえ、次の章では、「リコネクトのアプローチ」に焦点を当てます。
リコネクトのアプローチは、これらの理論や視点を基盤として、組織や個人の発展に向けた実践的な手法やアプローチを提供します。私たちは、組織開発の枠組みを超えて、個人と組織の間に存在する相互作用を重視し、持続可能な変革を促進することを目指しています。


