2.4 心理学:子どもだけではなく、大人も成長する

生き物の外観や機能を重視した機械論的な生命観の中では、子どもは成長するけど大人は成長しないという考え方が主流でした。しかし、近年、ハーバード大学のロバート・キーガンをはじめとする成人の発達理論などの研究により、この見方が更新されつつあります。

成人の身体的外観はもう発達しないかもしれませんが、「人は成人してからも知性や意識が発達し、生涯にわたって成長し続けられる」とキーガンは言います。成人発達理論では、人の知性は心の成長とともに変化し、以下の3つの段階に分類されます。

第一段階「環境順応型知性」:個人が自身の信念や考えをまだ確立しておらず、周囲の状況や要求に従う傾向があります。この段階では、個人は外部の指示に依存し、柔軟性や独自の判断力が不足しています。

第二段階「自己主導型知性」:個人が独自の考え方を持ちながらも、周囲の状況や期待に応じて自律的に行動します。この段階では、個人は自らの意志で仕事を進める能力を持ちつつも、新たな視点や情報を取り入れることに制限があります。

第三段階「自己変容型知性」:個人が自らの信念や価値観を確立した上で、周囲の変化や意見に柔軟に対応し、必要に応じて自己の考え方を修正します。この段階では、個人は自己のアイデンティティを維持しつつも、継続的な成長と変容を実現します。

自己のアイデンティティを維持しつつも、継続的な成長と変容を可能にする「自己変容型知性」の在り方は、生物学における「動的平衡」の考え方と類似しています。

この類似性は、ホロンの関係に由来します。知性や心は、生命の上位(円の外側)に位置するホロンです。生物にはアメーバなどの単細胞生物も存在し、それらが心を持つかどうかは未解明ですが、人間のような複雑な心はもっていない、と考えられています。そのため心や知性の発展は、生命の中に存在する要素が組み合わさることで起こると推測されます。

人間がさらなる心や知性の発展を求めるのであれば、数字やデータにのみ頼るのではなく、多様でインクルーシブな参加型アプローチでものごとを考えること、さらには静的な状態ではなく動的環境の中で常に自己同一性を確立しながらバランスを取り続ける必要があります。 まさに組織や社会全体が「自己変容型知性」をもつことが必要とされています。

しかし、このレベルに到達している人はまだアメリカの人口の5%未満と推計され、世界観が移行するために必要な割合と言われる人口の10〜20%を大きく下回っているのが現状です。

残念ながら日本での同様の推計は見当たりませんでしたが、成員の能力開発にかける金額はGDP比で0.1%と言われ(2018年の厚労省資料「労働経済の分析」より)、これは米国の2.1%、フランスの1.8%、英独伊の1%強に比べて、桁違いに低く、物理学、生物学などの基礎学問から起こりつつある地殻変動に多くの日本人の成人層の認識が追いついていない現状が推測されます。

「環境順応型知性」から「自己主導型知性」、「自己変容型知性」へと至っていない個人の多い組織では、やはり対応は環境順応型にならざるを得ません。これは大きく言えば日本にはまだまだこの分野における伸びしろがある、ということだとリコネクトでは考えています。